扶養の「収入の壁」って何?

扶養の「収入の壁」というのをみなさんは聞いたことありますか?

「収入の壁」が関連するのは所得税や社会保険(健康保険と厚生年金保険)です。これらの制度においては「扶養」という概念・考え方があります。そして、この「扶養」にまつわるものとして「収入の壁」というものがあるのです。

そもそも「扶養(ふよう)」とは?

「収入の壁」の前にまずは「扶養」について説明しておきます。「扶養」とは自力で生計を立てるほどの収入がない家族の生活の面倒をみることです。生活の面倒をみる人を「扶養者」といいます。それに対して、生活の面倒をみられる人を「被扶養者(ひふようしゃ)」といいます。

そして、この「扶養」の考えを取り入れている制度は大きく3つに分けられます。1つ目は税金における制度です。2つ目は社会保険における制度です。そして最後の3つ目が国民年金における制度です。

税金(所得税)における扶養

所得税の計算では被扶養者の有無や人数に応じて、課税所得の計算結果が変わります。被扶養者が多いほど、生活の面倒を見るのに経済的負担は大きくなります。そのため、被扶養者が多い人ほど所得税が少なくなる仕組みになっています。扶養の「収入の壁」の中に収まっていることで税法上の扶養となることができます。

社会保険(健康保険)における扶養

「健康保険」とはサラリーマンが加入する医療保険制度のことです。運営主体となるのは健康保険組合や全国健康保険協会(協会けんぽ)です。健康保険では、一般的に被扶養者の有無で世帯での保険料の支払い額の直接の負担は変わりません。健康保険における保険料は被保険者(サラリーマン)の月額の収入に応じて算出されます。例えば、扶養が3人いる人も、扶養がいない人も、同じ月額の収入であれば、同じ保険料負担となるのです。そのため、扶養の「収入の壁」の範囲に収めて扶養になる方が家計全体での保険料の負担を小さくすることができます。

それに対し自営業者が加入する医療保険制度である「国民健康保険」は市町村が運営主体です。こちらには「扶養」の考えが制度に組み込まれていません。

国民年金(第3号被保険者)における扶養

公的年金の制度ににも「国民年金第3号被保険者」という「扶養」の考えが取り入れられています。こちらは、扶養認定されて3号被保険者になると国民年金保険料の支払の負担が0になります。

自営業者等は「国民年金第1号被保険者」といって一律月額16,520円(令和5年度4月~3月)の保険料負担で、年間だと198,240円(約20万円)になります。仮に夫婦で自営業だと20万円×2人なので、年間40万円の負担です。

また、サラリーマンと被扶養者の専業主婦(夫)というモデルケースの場合、負担する年金保険料はサラリーマンの収入によって算定される厚生年金保険料です。負担金額は収入の多さに準拠しますので、一律ではなく人それぞれです。

このため、国民年金においても扶養の「収入の壁」に収まる範囲でいた方が有利な状況が生まれるのです。

扶養の「収入の壁」は複数ある

「扶養認定」されるためにはそれぞれの制度で認定基準があり、それぞれに収入要件が定められています。この収入要件による収入の上限のことを扶養の「収入の壁」といっています。そして制度が違っていたり、同じ制度内でも基準が段階的になっていることから扶養の「収入の壁」には以下のようないくつかの種類があるのです。

  • 103万円の壁
  • 106万円の壁
  • 130万円の壁
  • 150万円の壁
  • 201万6千円の壁

次回はこのこれらの扶養の「収入の壁」についての詳細をお伝えしたいと思います。(つづく=>>)

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